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ガンビア元閣僚にスイスが有罪判決 見えてきた「普遍的管轄権」の課題

裁判所前でデモを行う人々
2024年1月8日、ガンビアの元内相オウスマン・ソンコ被告の公判に先立ち、ティチーノ州ベリンツォーナにあるスイス連邦刑事裁判所前でデモを行う被害者とその親族 KEYSTONE/© Ti-Press

スイス連邦刑事裁判所は15日、ガンビアの元内相に対し、人道に反する罪で禁固20年の有罪判決を下した。普遍的管轄権に基づく裁判の判決は、世界中の残虐行為の加害者に対する強い警告として注目される。

人道に対する罪で禁固20年――。ティチーノ州ベリンツォーナにあるスイス連邦刑事裁判所がガンビアの元内相オウスマン・ソンコ被告に言い渡した判決は4000キロメートル以上離れたガンビアだけでなく、被告の逃走先・スイスでも待ち望まれていた。

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ガンビアの独裁者ヤヒヤ・ジャメ元大統領の右腕だったソンコ被告は、2000年から2016年にかけて犯した殺人、誘拐、拷問の罪に問われ、有罪となった。普遍的管轄権はジェノサイド(集団殺害)、人道に対する罪や戦争犯罪など国際法上の重大犯罪について、発生地や加害者の国籍に関係なく訴追できる制度。スイスは2011年、法制度を改正し普遍的管轄権を認めている。

スイスではリベリア反政府組織の元指導者が有罪判決を受けた例があるが、ソンコ被告ほどの政府高官が普遍的管轄権に基づき裁かれたのは欧州では初めてで、歴史的な判決となった。弁護側は無罪を主張しており、仮に控訴した場合、最終的な判決は少なくとも2年遅れることになる。

ソンコ被告は2016年にガンビアから逃走。ベルン州の難民申請者収容センターでガンビア人に気づかれ、国際犯罪者の追跡を専門とするジュネーブ拠点のNGOトライアルインターナショナルが通報した。ソンコ被告は2017年からスイスで身柄を拘束されている。

「明確なメッセージ」

ソンコ被告に下された有罪判決は重大犯罪への不処罰に対する「明確なメッセージ」だと、トライアルインターナショナルのフィリップ・グラント事務局長は言う。「スーダン、ミャンマー、ガザ、ウクライナで違反行為に手を染めた閣僚たちは、いつか第三国で逮捕され、裁判所から残虐行為をはたらいた罪で有罪判決を言い渡されるかもしれないと思うだろう」

何よりも、この判決は被害者とその家族にとって救いだ。被害者の一部は判決を見届けるためにスイスの土を踏んだ。原告の1人で、2016年に父親をガンビア政権に殺害されたファトゥマッタ・サンデング氏は仏語圏のスイス公共放送(RTS)に「とても嬉しく思う。それは家族もガンビアの国も同じだ。裁判所は、私の父が逮捕され拷問された日に内相としてウスマン・ソンコが果たした役割を明確に強調した」と語った。

「これはガンビアに対する非常に強いメッセージでもある」とグラント氏は言う。「ガンビアは今後、本国で正義が確実に実行されるためにすべきことをしなければならない。普遍的管轄権は補助的な措置であり、国際裁判所を代替するものではない」

普遍的管轄権の下で進行中の事件

スイス連邦刑事裁判所は昨年6月、リベリアの元反乱軍指導者アリュー・コシア被告に対し、戦争犯罪と人道に対する罪で禁固20年の有罪判決を言い渡した。コシア被告は普遍的管轄権に基づきスイスで裁かれた最初の戦争犯罪者となった。

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普遍的管轄権は現在、世界のほとんどの国の法制度に組み込まれている。

昨年はこの法則下で新たに36件の捜査が始まり、16件の有罪判決が言い渡されるなど利用例は着実に増えている。だがトライアルインターナショナルの「普遍的管轄権報告書・2024年版外部リンク」によれば、現在裁判が進行中なのは13カ国(うち10カ国は欧州)にとどまる。スイスのほか、フランス、ドイツ、スウェーデン、オランダ、ベルギーなどだ。

広範なプロセス

グラント氏はこれまで普遍的管轄権にあまり積極的でないスイスの司法当局を批判してきた。だが2022年にシュテファン・ブレトラー氏が検事総長に就任し、スイス連邦検察庁(BA/MPC)は国際犯罪に積極的に取り組む姿勢を示すようになったという。

「収集すべき(事件の)証拠から地理的距離が離れているところに普遍的管轄権の難しさがある。だが、罪の規模の大きさも問題であることが少なくない。捜査に莫大な時間と費用を要するからだ」。ジュネーブ大学刑事法学部のマリア・ルドウィツァク・グラッセー准教授はそう説明する。

このような広範なプロセスは、容疑者が既に高齢だった場合に障壁となる。

人道に対する罪でスイスで訴追されたアルジェリアのハレド・ネザール元国防相は、刑事手続きが完了する前の2023年に86歳で死亡した。ネザール氏の刑事手続きは2011年から進行中だった。シリア大統領の叔父で、スイスで刑事手続きが進むリファート・アル・アサド被告も現在85歳。公判が始まる前に死亡する可能性がある。

スイスの果たす役割

国際的な金融センターであり生活環境の優れたスイスは戦争犯罪者が身を隠す場として格好の国ともいえるが、当局にはこうした犯罪を捜査するための人的資源が限られている。

グラント氏は「私たちは、スイス連邦検察庁が今後もこれらの事件に積極的に取り組む姿勢を持ち続け、当局が必要な資源を提供してくれることを願う。スイスはそれが可能であるというシグナルを出した。この方向性を継続しなければならない」と話している。

編集:Virginie Mangin、英語からの翻訳:宇田薫、校正:ムートゥ朋子

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